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2025年02月06日 17時12分

ロッテルダム国際映画祭で日本映画『ゆきてかへらぬ』が注目のデビュー

2023年、ロッテルダム国際映画祭において、日本映画『ゆきてかへらぬ』が華々しいデビューを果たしました。この映画は、根岸吉太郎監督が約16年ぶりに手がけた新作で、広瀬すずさん、木戸大聖さん、岡田将生さんら実力派俳優陣が出演しています。映画の舞台は大正時代の日本で、実在した女優・長谷川泰子、詩人・中原中也、評論家・小林秀雄の三人の複雑な関係と青春を描いています。

天才詩人・中原中也の苦悩と成長

映画の中心となるのは、木戸大聖さんが演じる中原中也の人物像です。中也は、8歳の時に弟を亡くし、その喪失感を抱えながら生き続けた詩人です。彼の作品には、表面上は明るくとも、深い哀しみが潜んでいます。監督の根岸吉太郎さんは、この悲しみが中也にとって詩を紡ぎ出す力の源であり、彼の内面的な成長や葛藤を描くことに注力しました。

しかし、中也の物語は単なる悲劇ではありません。彼の詩は、失ったものへの追憶とその先にあるものを見つめる希望を同時に表現しています。この複雑な感情の交錯が、観客に深い感動を与える要素となっているのです。

長谷川泰子の成長と選択

広瀬すずさんが演じる長谷川泰子は、二人の天才に愛されるミューズ的存在です。しかし、彼女の役割は単なる受け手に留まりません。泰子は自身の夢と向き合い、成長していく過程で、愛することの意味を再定義していきます。彼女が中也と小林の間で揺れ動く姿は、観客にとっても共感を呼ぶものです。

泰子の成長は、映画の英題『Yasuko, Songs of Days Past』にも象徴されているように、彼女が過ごした日々の中での様々な経験が彼女を形作っていることを示しています。彼女の選択とその結果が、物語の核心に迫る重要なテーマとなっています。

大正時代の再現と現在への影響

『ゆきてかへらぬ』のもう一つの魅力は、その時代背景の再現です。大正時代の京都を舞台にしたこの映画は、当時の街並みや文化を忠実に再現しています。これにより、観客はその時代の雰囲気を感じながら、物語の中に引き込まれていくのです。

映画制作の過程では、台本の言い回しや衣装など、細部に至るまで時代考証が施されています。特に広瀬すずさんの和服姿は、モダンでありながら歴史を感じさせるもので、彼女の演技に一層の深みを与えています。

日本映画の国際的な評価

ロッテルダム国際映画祭での上映は、『ゆきてかへらぬ』が国際的な舞台で評価を受ける重要な機会となりました。映画祭での反響は大きく、特に中原中也という日本を代表する詩人の内面世界を描いた作品として、海外の観客にも深い印象を残しました。

このような国際的な評価は、日本映画が持つ独自の文化や歴史を世界に伝える良い機会となるでしょう。また、映画製作における質の高さや、役者陣の演技力が海外市場でも高く評価されることで、日本映画の新たな可能性が広がることが期待されます。

[中村 翔平]

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