鹿島アントラーズの戦術的ジレンマ、鬼木達監督の挑戦が続く
鹿島アントラーズの戦術的ジレンマ:攻守のバランスに試練
2025年のJ1リーグ開幕を迎えた鹿島アントラーズは、名将・鬼木達監督のもとで新たな挑戦に臨んでいます。しかし、湘南ベルマーレとの初戦で見せたパフォーマンスは、多くの課題を浮き彫りにしました。鹿島はこれまで、手堅い守備と効果的な攻撃で知られていましたが、戦術的再構築の過程で直面する難しさとはどのようなものでしょうか。
鬼木監督は、川崎フロンターレ時代の成功を背景に、鹿島でもボール保持を重視したスタイルの確立を目指しています。しかし、湘南戦ではこのアプローチが逆に仇となり、5バックを敷く相手に対して前への人数をかけたものの、ボールを失いカウンターを食らうシーンが目立ちました。特に、スピードスター・福田翔生や元鹿島の藤井智也の活躍によって、守備が脆弱化した印象を受けました。これにより、攻撃に厚みを持たせることができず、結果として0-1での敗戦を喫しました。
知念慶選手は試合後、「相手の5バックを崩すために前に人数をかけたが、引っかかってカウンターをもろに食らうことが多かった」と振り返りました。ボール保持を志向する中で、守備が手薄になるこのジレンマをどのように解決するかは今後の鍵となるでしょう。鬼木監督の下での丁寧なビルドアップと攻守のバランスをどう取るかが問われる中、次戦の東京ヴェルディ戦でも同様の課題に直面する可能性があります。ヴェルディはカウンターを得意とするチームであり、鹿島が再び失点を重ねると、さらなるプレッシャーがかかることでしょう。
セレッソ大阪に見る攻撃的サッカーの可能性
一方、開幕戦で圧勝を飾ったセレッソ大阪は、パパス監督のもとで「アタッキング・フットボール」を掲げています。彼らは、ボールを動かしながら多くの選手が絡む攻撃を展開し、誰か一人の得点力に頼らないチームを作り上げようとしています。この戦術は、昨シーズンの課題を克服するための試みであり、特に中島元彦選手の活躍が象徴的です。彼は「全員が活躍するチームを作る」と監督の意図を受け止め、競争意識を持ちながらプレーしています。
セレッソの戦術は、2019年の横浜F・マリノスがリーグ優勝を果たした時のスタイルを彷彿とさせます。リードしていても貪欲に追加点を狙う姿勢は、相手に対して常にプレッシャーをかけ続けることを可能にします。しかし、このスタイルには失点のリスクも伴います。パパス監督は「いい守備があって、いい攻撃がある」と述べ、攻撃と守備の両立が重要であることを強調しています。彼らは攻撃面のアップデートを進めつつ、守備面の改善も同時に進めていく必要があります。
こうした戦術的な試練に直面している中で、両チームがどのように進化していくのか、その過程を見守ることは、Jリーグのファンにとっても楽しみの一つです。各チームが自らのスタイルを模索し、試行錯誤を繰り返す中で、どのような結果を生み出すのか。シーズンを通して、彼らの戦いぶりから目が離せません。
[高橋 悠真]