中村憲剛が選ぶ理想のベストイレブン:欧州サッカーの哲学とは
中村憲剛の欧州サッカー観:理想のベストイレブンとその背後にある哲学
中村氏が選んだフォーメーションは1-4-1-2-3で、これはバルセロナの伝統的な布陣を踏襲しています。彼がこのフォーメーションを選んだ背景には、アンカーがチームのヘソとなる役割を果たすことが理想であるという考えがありました。しかし、この配置はあくまで初期のもので、試合中に相手の出方に応じて柔軟に変化する可変式であることも特徴です。このような戦術的柔軟性は、現代サッカーのトレンドを反映しており、試合状況に応じた適応力が求められています。
経験と若さのバランス
ゴールキーパーには、ヤン・ゾマーが選ばれました。彼はボルシア・メンヒェングラッドバッハでの活躍を経て、インテルでさらなる成長を遂げています。ゾマーの選出は、現代のGKに求められるビルドアップ能力への対応力と、経験の重要性を強調しています。守護神としての彼の存在は、チーム全体に安心感をもたらし、冷静な判断力でチームを統率します。
一方で、ディフェンスラインには若手のパウ・クバルシが名を連ねています。彼の選出は、守備だけでなく攻撃の起点となるビルドアップ能力を評価した結果です。フリック新監督の下での成長は著しく、バルセロナでの定位置を確保するに至っています。この選択は、若手選手の成長とチームへの貢献を期待する姿勢を示しています。
中盤の多様性と連携
中村氏の中盤には、ヨズア・キミッヒやフェデリコ・バルベルデといった多彩な役割をこなせる選手が揃っています。キミッヒは、ビルドアップの際に右サイドバックや中盤センターに立ち位置を取ることができ、その戦術眼と理解力でチームメイトを導きます。その一方で、バルベルデはピッチ全体を駆け回るボックス・トゥ・ボックス型のプレーヤーとして、攻守両面での貢献が期待されています。彼らの存在は、中盤の多様性と連携を強化し、チームの攻撃力を高める要因となっています。
また、中盤のラストピースとして選ばれたフロリアン・ヴィルツは、ライン間でのプレーに秀でた選手です。彼の選出は、攻撃のテンポをつくり出す能力と、中盤の一角としての振る舞いがチームにとっての武器になるという考えに基づいています。
攻撃陣の可能性と革新
攻撃陣には、キリアン・エンバペとヴィニシウスといったスピードと技術を兼ね備えた選手が選ばれました。エンバペは、今季から本格的に9番のポジションに挑戦しており、その適応力とゴールへの執着心は目を見張るものがあります。彼の存在は、チームの攻撃力を増幅させ、カウンターアタック時には決定的な役割を果たします。
一方で、ヴィニシウスは左ウイングとして、突破力とゴール前での冷静さを発揮します。彼の選出は、試合中のポジションチェンジを可能にし、攻撃の多様性を高める意図が込められています。これらの選手たちが織り成す攻撃陣は、単なる個人の能力の集まりではなく、相互に連携し、新たな可能性を模索する革新的な布陣と言えるでしょう。
中村憲剛氏の「最強ベストイレブン」は、彼のサッカー観と哲学を体現するものです。経験と若さ、多様性と連携、攻撃の可能性と革新性が絶妙に組み合わされたこのチームは、彼が目指すサッカーの理想像を垣間見せてくれます。サッカーは単なるスポーツにとどまらず、戦術と哲学が融合した一つの芸術であることを、この選考を通じて改めて感じさせられます。
[山本 菜々子]