競馬界の変革と装蹄師西内荘の挑戦、AI技術への期待と不安
変わりゆく競馬業界の中で、装蹄師が語る調教師への感謝と新たな挑戦
競馬界の裏方として、馬の健康を支える重要な役割を担う装蹄師。その中でも長年にわたり活躍してきた西内荘さんは、調教師たちへの感謝とともに、競馬界の変遷を見つめてきました。今年も多くの調教師が引退し、新たな調教師がその役割を引き継ぐ中で、西内さんは自身の経験を振り返ります。
調教師の引退は競馬界にとって大きな節目となります。西内さんが特に感謝の意を表したのは、音無調教師と木原調教師です。音無調教師のもとでは多くのG1馬を手掛け、その経験が西内さんのキャリアに大きな影響を与えたと言います。彼の厩舎の馬を装蹄し、その一頭がG1レースで勝利を収めた瞬間は、まさに装蹄師としての誇りを感じる瞬間だったでしょう。
木原調教師については、内藤繁春厩舎の時代から長く関わってきたと語り、特にテイエムスパーダという馬への思い入れを語ります。装蹄を通じて感じた馬の成長や状態の変化は、彼らが調教師と築いた信頼関係の賜物と言えるでしょう。
装蹄師としての挑戦とAI技術の波
競馬界における技術革新は、人間の直感と経験に基づく伝統的な方法とAI技術の台頭という、新たな挑戦をもたらしています。西内さんもこの変化を肌で感じており、AIが馬の状態を判定する時代に突入していることに言及しています。しかし、彼は装蹄師としての経験に基づく判断が、いまだAIには負けないと自信を持っています。
AI技術の導入により、馬の状態を客観的に評価することが可能となった一方で、人間が持つ感覚的な判断や経験値は、依然として競馬界において重要な役割を果たしています。特に装蹄に関しては、馬の微妙な足取りや蹄の状態を直接確認することでしか得られない情報が多く、これが馬のパフォーマンスに直結するのです。
装蹄師が見据える未来と期待の馬たち
装蹄師としての西内さんは、競馬界の未来を見据えながらも、現在のレースにおける馬たちのパフォーマンスに期待を寄せています。例えばスマートクラージュという馬については、脚元が安定していることが能力発揮のカギと語り、その状態を維持するために日々の装蹄作業に力を注いでいます。
また、ハッピーマンやドラゴンといった馬たちも、装蹄を通じて感じた成長を期待しています。特にドラゴンについては、気性の荒さが蹄に負担を与えることから、接着装蹄での対応が求められるという特異な例も紹介されています。これらの馬たちは、装蹄師の手によってその潜在能力を最大限に引き出されることを期待されているのです。
競馬界は日々進化を続けていますが、その中で装蹄師の役割は変わらず重要です。彼らの技術と経験が、名馬たちの輝かしい未来を支えていることに疑いの余地はありません。西内さんのコラムを通じて、競馬というスポーツが人と馬との深い関係性の中で成り立っていることを改めて感じさせられます。
[山本 菜々子]