羽生結弦と野村萬斎が舞う、アイスショー「notte stellata 2025」開催
羽生結弦と野村萬斎の異色コラボレーションが生む新たな芸術の境地
フィギュアスケート界のレジェンド、羽生結弦さんが自身の故郷である宮城県で開催したアイスショー「notte stellata 2025」が大きな話題を呼んでいます。彼が演じる「SEIMEI」と狂言師・野村萬斎さんとのコラボレーションは、伝統と革新が織りなす新たな次元の表現を生み出しました。このコラボは、平昌五輪で羽生さんが使用した伝説的プログラム「SEIMEI」を基に、舞台上で安倍晴明を演じる野村さんとの共演を実現させたものです。
羽生結弦の「SEIMEI」とは
羽生結弦さんは2018年の平昌五輪で「SEIMEI」というプログラムを披露し、見事な演技で金メダルを獲得しました。このプログラムは、陰陽師の安倍晴明をテーマにしたもので、伝統的な日本文化とモダンなフィギュアスケートが見事に融合した作品です。羽生さんはこのプログラムに特別な思い入れを持ち、当時から野村萬斎さんとの共演を夢見ていました。
今回のアイスショーでは、その夢が実現。「SEIMEI」の音楽に合わせて、野村さんが安倍晴明として舞台に立ち、羽生さんは式神として氷上を舞う形式で演じられました。このコラボレーションは、ただのパフォーマンスにとどまらず、深い芸術的表現を追求する試みでもありました。
緊張の中で生まれる新たな表現
羽生結弦さんはこの共演について、「五輪かなと思うぐらい緊張しました」と振り返ります。彼にとって、野村萬斎さんとの共演はただの夢ではなく、プロスケーターとして一段上の表現に挑戦する大きなステップだったのです。羽生さんは「プロとしての芸術を持ち合わせないといけない」と自らを奮い立たせ、リハーサルから本番にかけて全力を尽くしました。
この緊張感は、彼の演技に新たな色を加えました。羽生さんは、安倍晴明を演じる野村さんに対する式神として、単なる技術の披露にとどまらず、物語性と感情を氷上で表現しました。羽生さん自身も、演技を通じて自身の成長を感じたと述べており、観客にとっても新鮮で深い感動をもたらしました。
野村萬斎の視点と伝統芸能の力
一方、野村萬斎さんもこのコラボレーションを非常に高く評価しています。「彼の金字塔というべきメダルをとった曲に関わらせてもらって光栄です」と語り、羽生さんの成長を頼もしく思うと述べています。野村さんは、羽生さんのスケートが単なる個人的な活動を超え、日本の文化を背負う公人としての意識を持っていると評価しています。
狂言という伝統芸能を通じて、日本の文化を世界に発信することに情熱を注ぐ野村さんにとっても、今回の共演は新たな挑戦であり、羽生さんとの共通点を見出す機会となったようです。芸術の世界における伝統と革新の融合は、時に新しい価値を生み出し、観客に深い感動を与えます。
被災地への思いと未来への希望
さらに、今回のアイスショーは東日本大震災からの復興を祈念する意味も込められていました。羽生さん自身も震災の被害を受けた仙台市出身であり、このショーを通じて被災地への思いを込めることに特別な意義を感じています。観客の健康と安全を第一に考え、遠方から訪れる人々やオンラインで観る人々に感謝の意を表しています。
会場での演技だけでなく、オンライン配信を通じて多くの人々に感動を届けることができたことは、羽生さんにとっても大きな達成感となったようです。被災地への思いを胸に、羽生さんは今後も新たな挑戦を続けていくことでしょう。
今回の羽生結弦さんと野村萬斎さんのコラボレーションは、フィギュアスケートと日本の伝統芸能がどのように共鳴し合い、新たな表現を生み出すことができるのかを示す一例でした。観客にとっても、二人のアーティストが持つ情熱と創造力に触れる貴重な機会となったことでしょう。
[佐藤 健一]