市川團十郎、歌舞伎の未来を模索する挑戦と家族愛

市川團十郎、伝統と愛を紡ぐ歌舞伎の未来像

歌舞伎界における大名跡「市川團十郎」。2022年に「十三代目市川團十郎白猿」を襲名した市川團十郎さんは、伝統を受け継ぎながらも新たな挑戦を続けています。彼の家族への愛、そして歌舞伎界の未来についての思いを探ります。

伝統と親の愛、そして新たな挑戦

市川團十郎家は、代々歌舞伎の名を継承する一子相伝の家系です。團十郎さんも幼少期からその使命を理解し、父親からの教育を受けてきました。しかし、彼が強調するのは単なる伝統の継承ではなく、時代と共に変わる「教えのあり方」です。團十郎さんはこう語ります。「今の時代、ただ『こうしなさい』では通用しない。親としての責任を果たしつつ、子どもたちが多面的に生きることができるように導くべきだと思います。」

こうした考えのもと、團十郎さんは歌舞伎の伝統を次世代に伝えることに加え、新しい挑戦を取り入れています。最新作の舞台『SEIMEI』では、LUNA SEAのギタリストSUGIZOさんや世界的ダンサーのケント・モリさんを迎え、現代的な要素を融合させた新しい歌舞伎の形を模索しています。團十郎さんは「挑戦するということを忘れちゃいけない」と述べています。

麻央さんの教えと、家族への愛

團十郎さんにとって、家族は大切な存在です。特に、2017年に乳がんで亡くなった妻・小林麻央さんが彼の人生に与えた影響は大きいものです。「麻央が病気になるまで、愛なんて考えたことがなかった」と語る彼は、麻央さんを通じて愛の大切さを学びました。今では、家族や仲間、歌舞伎に対して愛を持つことが不可欠だと感じています。

彼の長女、麗禾さんの定期入れに入っていたのは、團十郎さん自身が小学6年生の頃の写真でした。SNSに投稿されたこの写真が話題を呼び、「麗禾ちゃんのパパ愛が溢れている」と多くの反響が寄せられています。麗禾さんが父親の写真を大切に持ち歩く姿には、家族の絆が垣間見えます。

歌舞伎の未来を見据えて

市川團十郎さんは、歌舞伎の伝統を守りつつも、時代と共に変化するべきだと考えています。彼の考え方は、家族への愛と同じように、柔軟性と適応力を持つことが必要です。彼の息子、新之助さんもまた、同じ道を歩み始めており、團十郎さんは次世代に向けての責任を感じています。「多面的に生きる」という教えを通じて、子どもたちが自らの可能性を広げていくことを願っています。

市川團十郎さんが掲げる「愛」と「伝統」の共存は、歌舞伎界だけでなく、現代社会においても多くの人々に共感を呼び起こしています。彼の挑戦は、歌舞伎の未来を切り開く鍵となるでしょう。

［伊藤 彩花］