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2025年03月09日 06時12分

王将戦第5局:藤井王将と永瀬九段の深い攻防戦

王将戦、第5局の舞台裏:藤井王将と永瀬九段の攻防

将棋の深さが試される封じ手と対局戦略

初日、両者が選択した昼食は、それぞれの地元に根付いた新旧のご当地グルメ。藤井王将は「煮ぼうとう・とろろご飯」を、永瀬九段は「深谷ねぎカレーやきそば」を注文しました。この選択は、単なる食事以上の意味を持ちます。煮ぼうとうは渋沢栄一が好んだとされる郷土料理であり、藤井の選択には地元文化への敬意を感じさせます。一方、永瀬が選んだ深谷ねぎカレーやきそばは、2016年の「新・ご当地グルメコンテスト」でグランプリを獲得した一品で、斬新なアイデアと地域の特産品を組み合わせた料理です。

対局自体は、序盤から中盤にかけての戦略が大きなカギとなりました。特に、藤井の2手目△3四歩から始まる展開は、永瀬にとって想定外のものでした。藤井は序盤から積極的に新たな局面を模索し、永瀬はその対応に追われる形となりました。永瀬が「早々に力戦となった」と語るように、藤井の一手が対局の流れを大きく変え、永瀬は持ち時間を多く消費することになりました。

封じ手とその意義

封じ手というのは、将棋の2日制対局において1日目の最後に行われる重要な手順です。この手は、翌日の対局の流れを決定づけるものであり、立会人や副立会人がそれを公正に管理します。今回、藤井猛九段や佐々木慎七段が立会人を務め、彼らの見解も交えて封じ手が慎重に選ばれました。藤井猛九段は「△4二王」とし、対局の流れを慎重に見守りました。

封じ手を巡るこのような駆け引きは、将棋の持つ深さと複雑さを象徴しています。藤井王将は、この封じ手によって永瀬をさらに迷わせる結果となり、対局の行方はますます不透明なものとなりました。

対局者の心理と次なる戦い

永瀬九段は、藤井の新手に対し慎重に対応しつつ、攻めの主導権を奪おうと試みました。しかし、藤井の手の内を見透かすことは容易ではありません。藤井の後手雁木の布陣は、永瀬にとって意外性があり、永瀬の陣形は「発展性がない」と藤井猛九段が指摘するように、攻めのタイミングが難しいものでした。41手目の▲7七桂は、永瀬の攻めに転じようとする意思表示でしたが、藤井の巧妙な手によりその意図も阻まれました。

対局中、藤井が38手目に見せた△7三桂は、永瀬を再び困惑させました。永瀬は無人の対局室で盤面を凝視し、次の一手を模索しました。記録係も席を外す珍しい場面で、永瀬は横から盤面を確認し、28分もの熟慮を経て次の一手を決めました。このような対局者の心理戦は、将棋の魅力の一つであり、観る者を引き込む要素となっています。

[田中 誠]

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