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2025年03月10日 06時11分

羽生結弦と野村萬斎が織り成す『notte stellata 2025』、鎮魂と再生の舞台が感動の千秋楽を迎える

羽生結弦と野村萬斎が創り上げた鎮魂と再生の舞台、『notte stellata 2025』

フィギュアスケートの世界で「氷上のプリンス」と称される羽生結弦さんが座長を務めるアイスショー『notte stellata 2025』が、宮城県のセキスイハイムスーパーアリーナで感動の千秋楽を迎えました。このショーは、羽生さんが2018年の平昌五輪で滑ったエキシビションプログラムと同名であり、彼自身が東日本大震災の夜空に希望を見出した「満天の星」に由来します。今年は3回目となる公演で、震災から14年を迎えた被災地の東北から、希望の光を世界に発信しました。

この特別な舞台には、狂言師の野村萬斎さんがスペシャルゲストとして参加しました。羽生さんと野村さんのコラボレーションは、伝統芸能とフィギュアスケートの融合を見事に体現しています。伝説のプログラム『SEIMEI』を演じた羽生さんは、野村さんが主演した映画「陰陽師」の曲を使用し、2015年に野村さんと対談した際に大きな影響を受けたことから、いつか共演を果たしたいと考えていたそうです。そして、今回ようやくその夢が実現しました。

『ボレロ』で描かれる鎮魂と再生の物語

『ボレロ』は、フィギュアスケートにとって特別な曲です。1984年サラエボ冬季五輪でジェーン・トービル&クリストファー・ディーンが滑り、芸術点で満点を取得したことで知られています。羽生さんと野村さんは、この名曲に対し、震災後の鎮魂と再生というテーマを重ね合わせ、崇高な演技を披露しました。黒い衣装のスケーター達が舞台で舞う野村さんと調和し、白と金の衣装を纏った羽生さんが狂言の所作を取り入れながら滑る光景は、観客を魅了しました。

舞台がかつて震災時には遺体安置場として使用されていたセキスイハイムスーパーアリーナで行われたことも、演技に一層の意味を持たせています。野村さんは囲み取材で、「ここが安置場であったということと、でもやっぱり我々はいろんなものを受け止めながら生きている」と語り、観客と共に「生きることの尊さ」を共有した瞬間でした。

『SEIMEI』に込められた新たなアプローチ

後半には、羽生さんと野村さんによる『SEIMEI』が披露され、フィナーレを飾りました。羽生さんは、今までの『SEIMEI』とは異なるアプローチを取り入れ、野村さん演じる安倍晴明が羽生さんを操るような設定で進行しました。この演技について羽生さんは、「生きていることの役割とはなんぞや」と自問自答しながら挑んだと語っています。

特に印象的だったのは、リンクに描かれた五芒星です。これは安倍晴明が魔除けの呪符として用いたもので、震災からの再生を祈る象徴として舞台に取り入れられました。羽生さんは、震災の時に生まれた絆をさらに広げていきたいと願い、公演に参加したすべての人々が「生きている実感」を共有できたことを嬉しく感じていると述べました。

日本の伝統芸能とフィギュアスケートという異なる領域の芸術が融合したこの舞台は、被災地からの希望のメッセージを世界に届ける素晴らしい機会となりました。羽生結弦さんと野村萬斎さん、そして参加したスケーター達の熱演は、観客の心を揺さぶり、感動の渦を巻き起こしました。彼らの演技を通じて、生きることの喜びと尊さを改めて感じることができたのではないでしょうか。

[佐藤 健一]

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