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2025年03月10日 23時13分

映画『光る川』、ポルト国際映画祭で最優秀作品賞を受賞

映画『光る川』、ポルト国際映画祭での栄冠とその背後にある芸術的ビジョン

映画『光る川』が、第45回ポルト国際映画祭のオリエントエクスプレス部門で最優秀作品賞を受賞しました。この映画は、金子雅和監督による長編3作目で、彼の作品群は自然を舞台にした独特の視覚美と民俗学的な世界観で知られています。今回の受賞は金子監督の芸術的ビジョンが国際的に評価された証と言えます。

ポルト国際映画祭は、1981年に創設され、毎年ポルトガルの歴史ある都市ポルトで開催される国際的な映画祭です。この映画祭は、シッチェス・カタロニア国際映画祭、ブリュッセル国際ファンタスティック映画祭と並び、世界三大ファンタスティック映画祭の一つとされています。今年の映画祭では、世界71カ国から1800作品以上がエントリーされ、その中から選ばれた約100作品が上映されました。

自然と人間の関係を再考する『光る川』

『光る川』は、現代化への分岐点である高度経済成長期と、さらに過去の自然への畏怖が強かった時代を交錯させて描いています。無垢な少年の眼差しを通して、里の娘と木地屋の青年の関係性が描かれ、その中に社会制度からの解放へのもがきが盛り込まれています。この物語は、現代社会の中で疲弊した人々に、自然との共生や原点回帰の重要性を問いかけるメッセージを秘めています。

映画の舞台となる自然環境—川、山、洞窟—は、CGを一切使用せず、実際のロケーションで撮影されました。これにより、観客は自然の圧倒的な迫力と神秘性をスクリーンを通じて体感することができます。音楽は、細田守監督作品で知られる高木正勝が手掛け、映画の情感を繊細に演出しています。

国際的評価とアジア映画の存在感

今回の受賞は、金子監督がこれまで培ってきた独自の映画制作スタイルが国際的に認められたことを示しています。オリエントエクスプレス部門は、アジア映画の中で最優秀作品を選ぶコンペティションであり、日本を含む16作品が競い合いました。金子監督は、映画の舞台となったポルトという街との縁を強調し、映画が持つ巡礼の旅のようなテーマが現地の人々に受け入れられたことに感謝の意を表しています。

このような国際的な評価は、アジア映画全体の存在感を高めることにもつながります。『光る川』の成功は、他のアジアの映画製作者にとっても大きな励みとなり、今後の作品制作において新たなチャレンジを促すことでしょう。

多彩なキャスト陣とその演技

『光る川』のキャストには、華村あすか、葵揚、有山実俊など、多彩な顔ぶれが揃っています。彼らはそれぞれの役に深みを与え、物語のリアリティを高めています。特に、子役の有山実俊が一人二役を演じることで、物語に独特の視点を加えています。このようなキャスティングの工夫も、作品の魅力を一層引き立てています。

[鈴木 美咲]

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